さよならリグレット

さよならリグレット

さみしくなんかない
きみのこえもわかるけど
わすれそう

この忘れそう、って最後の歌詞の一言は
色々ありすぎて忘れそう、じゃなくて
離れてる時間が多すぎて、という自分に重ねて。

旅の1日が始まる前の、この時間はいつも不安でぐらぐらする。明日ちゃんと電車遅れないで乗れるか、荷物預ける場所あるか、タクシー怖いとか、道も乗り換えも不安だって思って寝る。で、宿泊先についたらすごく安心してご飯を食べる。でも数時間後はこうなってる。結構平気、とか自分で思ってるけど、実際ギリギリなのかも。でもそんなこともないのかもね。

Mutations

Mutations

成田空港の駐車場から、小さめのワゴンでターミナルまで送ってもらった3月の早朝。まだ外は暗く、道路に整列したナトリウムランプの灯が車内まで届いてた。
成田の朝は寒くて、これから南に向かうのに少し厚着をした私たち家族と対象に、乗り合わせたおじさんたちはウィンタースポーツのボードを持ってた。モコモコのダウンジャケットを着て、数時間後にゲレンデでするだろう眩しげな顔で、ナトリウムランプの光が目映い車外のどこかを見てる。
車内のBGMはBeckで、まだずっと先の夏の歌なんて暢気に歌ってた。オレンジ色の照明と、ひんやりした空気と沈黙と、これからの旅の期待とはやる気持ちは、まだちょっと忘れられそうにない。またFMラジオを聴いてる。

「じゃあそろそろ」
「そうねそろそろ」
「楽しいお話ありがとうございました」
「こちらこそ」

ドトールで隣のおばちゃん達の会話の結びが素敵だった。春離任する顧問に卒業式の日に花束を渡したときも「ありがとう、幸せでした」って言った先生の言葉も好き。

ばいばい、しばらく会うことはない。七尾旅人のシングルありがとう。私が昔ちょろっと言っただけの固有名詞が、好きっていう素敵な感情を付加して、こんな形で返ってきた。お礼にヘヴンリィに馴染めないあなたに、ハーシーズはいいよって言葉を残して私は帰った。
ヘヴンリィ・パンク:アダージョ

ヘヴンリィ・パンク:アダージョ

もったいない、幸せとか喜びを分割して長く続けたい。一瞬で散るのがいいと桜や人間の魅力を語るけど、そんなんじゃなくて、他人の好意の話、過ぎた日々を振り返るのは最中でもできるじゃないか。出発点にごく近い今でも振り返って確認するように触れてる。

忘れちゃいけない痛みだってある。自分の深いところの、精神的な痛みを忘れちゃいけない。おそらくこれはすぐ忘れたい部類のもの、だけど目を背けたら癖になるもの。噛みしめて生きたい。自己犠牲の上に成り立つ幸せなんてない。偽らない。